この記事には重大なネタバレが含まれており、本作を未読のままこの先を読むと100%楽しめなくなる虞があるので注意していただきたい。
この話は夜見山北中学校に榊原恒一が転校してきた時から始まる。
作品内が神戸連続児童殺傷事件が起こった直後の設定で、榊原という苗字のせいでからかわれストレスで自然気胸になりその療養のために都心から離れた夜見山という町に越してきた。という中々に重たい過去を持つ恒一くんは入院先の病院で眼帯をした少女、見崎鳴と出会う。恒一くんは夜見山北中学の三年三組に席を割り当てられたのだが、そこでは鳴がいないものとして扱われていた。不可解に思った恒一くんは鳴と関わっていくが彼女はどことなく周囲の人間を避けているようで、恒一くんの周りのクラスメイトもそれとなく避けるように促してくる。そうこうしているうちにクラスメイトの一人が死んでしまい、日にちを置かずクラスメイトの家族が次々と亡くなっていく。いつしか<いないもの>として扱われてしまう恒一くん。その原因は夜見山北中学校三年三組にかかる呪いだった。
というのが大体のあらすじである。
因みに呪いというのが26年前のことで、ミサキというあらゆる才能に恵まれ人徳もあった超人的生徒が亡くなり、それを受け入れられなかったクラスメイトがミサキがまだ生きているというふりをしたのがそもそもの始まりである。そのせいで“死”に近づいてしまった三年三組というクラスに稀に<もう一人>が紛れ込むようになった。その増えた一人は死者で、本人や周囲の記憶は勿論、記録すら改ざんして紛れ込むため判別がつかない。んで、増えた年は1月に1人以上、三年三組の生徒と教師とその二親等までの範囲の人間がランダムで選ばれて死んでしまう。
色々試したが効果があったのがたった一つで、それは増えた<もう一人>の代わりに誰かを<いないもの>として扱うことでクラス内の人数の帳尻を合わせるという方法。これをした年は死人が出なかったという。
つまり今作での<いないもの>は鳴だったわけだな。上記の都合を全く聞かされなかった恒一くんは好奇心も相まって鳴にかなりアクティブに関わってしまい、そのせいで呪いが発動してしまったと。
この辺ご都合主義っぽくてなぁ…。都合を話さない周りも周りだけど、周囲がそれとなく注意してるのを気付いているのに全く聞かないばかりか話の途中ですら鳴を見かけるとほいほい後をついて行ってしまう恒一くんも迂闊すぎる。前にも少し触れたけど、ホラーとしての展開を迎えさせるために登場人物を愚かにするってこう、もやもやする。
まぁでもそのおかげで呪いの存在を恒一くんが知るまでは鳴が生きているのか死んでいるのか(つまり恒一くんにのみ見える幽霊なのか否か)が判然とせず、クラスの雰囲気も相まって中々不気味だった。
その後呪いを止めるために<もう一人>探しをするわけなんだけど、その<もう一人>の正体が本当にびっくりした。主人公である恒一くんの一人称視点だからこそ光る叙述トリックで、もう「やられた!」感がすごい。これだけはアニメでも漫画でも小説でもいいから読んで確かめて欲しい。
しかし呪いは解けなかったわけだけど、続編とかあるんかな…。
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